スパイラルノート

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なす

茄子紺やまほろばの風吹き起こり

 露地もの夏野菜の盛りを迎えている。どこの畑でも、野菜が出来すぎて仕方がない。野菜を作る人は、種をまく、あるいは苗を植える際に、根付かない株が出ることを見越して、少し多めに株を作る。株が根付いてからも実なりの悪い株が出ることを予想して、さらに少し多めに株を育てる。かくして、家族だけでは食べきれないほどの野菜が、いっぺんに食べ頃を迎える。
 あっちでも、こっちでも取れたて野菜が余っているのだ。わが家のような野菜がろくに育たぬ日曜農夫の家には、その余剰野菜があっち、こっちから持ち込まれる。かくして、わが家でも野菜はだぶつく。それを見越してか、朝新聞を取りに出ると、玄関先に土がついたままの野菜が一山置き去りにされていたりする。
 しばらく、胡瓜や茄子は買わなくてすむ。なかでも、茄子。若い頃はさしてうまい野菜とも思わなかったのだが、最近は好んで食べる。ただの塩漬けでもいい。味噌で炒めてもいい。どう料理しても、茄子は茄子。
 ただし、あの色はなにものにも代えがたい。となれば、どうしても塩漬けということになる。茄子独特のつやのある紺色が、織部あたりの無骨な皿にのって食卓にのぼれば、「まほろば」とでもいうしかない風景が立ち上がってくる。それが追憶なのか、自足なのかは人それぞれ。
「茄子紺」は「なす・こん」。

2005/08/05   野菜     33TB 0   33Com 0  

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