三番方の鉱夫迎えん牽牛花
九月も十日過ぎになって朝顔でもあるまいが、季語上では秋の花になる。
今から四十年ほど前までは、このあたりは全国有数の石炭産地であった。炭鉱労働者は三つの勤務時間に割り振られ、昼夜兼行で石炭を掘り続けた。朝早くからの勤務が一番方(いちばんがた)、午後からが二番方、夜から翌朝までが三番方となる。
朝、炭坑住宅のはずれに立っていると、三番方を終えた鉱夫たちが、空のアルミ弁当を鳴らしながら帰ってきた。炭坑住宅の節穴だらけの板塀に咲いていた紺色の朝顔が、今でも時々、何かの拍子に浮かんでくる。
わたしが迎えに行った人は、炭坑閉山後ほどなく突然亡くなってしまった。精のつくものを食べなければならない重労働をしているのに、レバーが嫌いで、顔をしかめながら無理やり食べさせられていた。眉の上にマッチ棒がのるほど眉の濃い、やさしい人だった。その人の膝の間で、ずいぶん長い時間をすごした気がする。
牽牛は、織り姫彦星の彦星。朝顔が咲く頃、牽牛星が輝きを増すから、朝顔の別名となった、という由来を聞いたことがあるが、定かではない。
2005/09/15
花 ・
60TB 0
60Com 0